2018.01.01

 硫黄山の麓から温泉街に至るつつじヶ原は、高山性の樹木が低地に生えていることで有名です。ことに、白いかれんな花を咲かせるイソツツジは毎年、6 月 の中旬から下旬に見頃を迎えます。

 さて、この硫黄山を背景にかつて、盛大にお祭りが行われていたことをご存じでしょうか。1953(昭和28)年、川湯温泉観光協会(当時)が「夏の本格的な観光シーズンの到来」を全国的にPRするため始めたのが『川湯白つつじ祭り』です。初めのころは、硫黄島の麓で民謡大会を催したに過ぎなかった祭りですが、その後の関係者の努力とPRが功を奏し、回を重ねるごとに祭りは全国的に知られるようになりました。

 しかし、祭り当日は例年、マイカー族がどっと繰り出すため、硫黄山一帯の道路は車で埋まり、定期観光バスが麓の駐車場に入れないという事態が起こりました。これ以上駐車場を拡張することができないこともあり、1978 (昭和53)年、惜しまれつつも祭りは姿を消します。

 最後となった『第26回川湯白つつじ祭り』は、前夜祭を川湯神社境内の特設舞台で、本祭りは会場を満開のイソツツジに包まれた硫黄山の麓に移し、各種催しが盛大に行われました。

 祭りはその後、観賞会、探勝会と時代の流れとともに姿を変えましたが、 当時からある『川湯ばやし』は今もなお、子どもたちに伝承されています。その力強い太鼓の響きの中に、かつての『祭り』がよみがえるようです。

てしかが郷土研究会(蜂谷)