2018.01.01

 「このごろは摩周湖を見たときの喚声が聞こえないんだよ」ほぼ毎日仕事で摩周湖に上っている人のつぶやきです。

 1951(昭和26)年、ジャーナリスト本多勝一さんが19歳のとき、友人の曽我さんと2人で北海道を気ままに漂泊して書き記した北海道旅行記が、後年『初めての旅』として出版されました。

 1983(昭和58)年に縁ができ、送っていただいた本多さん自身の著書20数冊の中に『初めての旅』があり、摩周湖を見た時の感動が綴られているのを思い出し読み返してみました。本多さんはこの本でその時の感動を次のように表現しています。

 「こうゆう湖は少なくとも私はこれまで見た事がない。高さ300メートルほどのほとんど絶壁に近い湖岸の下にその水質は周辺の景観を反映して淡白なら ず、なにか水銀のような鉱物的重さを感じさせる。視界全体から一種の妖気じみた魅力を感じて、私たちはしばらく言葉もなく立ちつくした」

 冒頭でのつぶやきは屈斜路コタンでも同様で、湖岸に立つとすぐにカメラを 向けて無言で撮影を始め、数分で立ち去ります。喚声が聞こえてこないのはど うやら本多さんの「言葉もなく立ちつくした」感動とは大きく違うようです。

 私たち郷土研が、先人たちから預り、未来に託された『てしかがの蔵』の住人たち。彼らの見方や彼らから受ける感動もそれぞれですが、形や性能を比べる だけでなく、そっと触れて耳を澄ませてみてください。先人たちの汗や息遣いが 聞こえ、不思議な感動が得られるはずです。新しい年も開放日を多く設けます ので『蔵』の住人たちに会いに来てください。

 本多勝一さんの「初めての旅」には、41ページにわたり釧路国・弟子屈町として 1951年のアナログ感動が書かれています。

てしかが郷土研究会(充洋)