2018.01.01

 弟子屈には2曲の新民謡があります。一つは、1952(昭和27)年10月に行われた「第1回摩周湖観月祭」に合わせて作られた「♪♪ハァー いでゆ弟子屈♪♪」で始まる「月の摩周」(振り付け:松賀吉次)。もう一つは、1953(昭和28)年9月に作られた「♪♪摩周 摩周山から 朝日がのぼる♪♪」でおなじみの「弟子屈音頭」 (振り付け:吉野孝)です。いずれも、弟子屈町文化協会会員の木下春影(作詞)・瀬野清(作曲)の作品です。作詞者は『「月の摩周」の歌詞は春夏秋冬四季の歌で4番であるが「弟子屈音頭」は9番まであるので知ってほしい』と言います。

 この新民謡が作られたころの伴奏や歌は、同じく協会員の電器店主が円盤式録音機で録音し、催しなどがあると披露していたのですが、録音盤はやわらか く、重いレコード針の電気蓄音機だったため、すぐに摩耗してしまいました。

 1956(昭和31)年、本格的なレコード制作を日本コロムビアに依頼します。若山彰、コロムビア・ローズの歌唱でレコーディングが完成して、SP盤(※1)1,000枚が納品されました。しかし、レコード制作に268,000円かかり、協会の理事が連帯保証人となって銀行から300,000円を借り入れました。返済は、レコードの売上金と、協会の芸能サークルが催し物に出演した謝礼、さらには連帯保証人がポケットマネーをあてていました。苦労して5年ほどかかって完済したときは、うれしくて祝賀会を開いたそうです。

 1976(昭和51)年、レコードも残り少なくなってきて再版の話も出ます。でも、 当時の借金返済の苦労を思うとなかなかふんぎれずにいたのてすが、文化協会員の電器店主がソノシート(※2)で制作をしています。

てしかが郷土研究会(松橋)

※1 SP盤/蓄音機用のレコードで回転数は78回転。

※2 ソノシート/極めて薄いレコード。安価で制作ができ、雑誌などの付録にすることがあった。

※当時の物価/かけうどん→1杯30円程度。現在の物価に換算すると、30万円はおよそ500万円ほどか