2018.01.01

  『弟子屈町史−昭和56年版−』によると町立川湯診療所は、昭和29年に開拓助成策で川湯開拓診療所が(川湯温泉プールのところ)設置され、昭和30年に町へ移管されて町立となり、医師は週2回国立弟子屈診療所から派遣されてい ました。しかし、町立川湯温泉治療研究所の記述はありません。

 昭和31年7月から34年7月まで国立弟子屈診療所長であった穂苅 香先生 は、日本温泉気候学会(当時、現・日本温泉気候物理医学会)会員として温泉の医学的研究をなされ、昭和33年8月『温泉浴の下垂体副腎皮質機能に及ぼす影響に関する実験的研究』の学位論文で、北海道大学医学部から医学博士(旧制)の学位を授与されました。

 川湯の温泉(酸性硫化水素泉・酸性硫黄泉−旧泉質名)に特異な効果を感じられたのでしょうか。町立川湯診療所の一室に町立川湯温泉治療研究所を設立(設立年月日や経緯は不詳)され、著書『温泉−いのちと湯治−』を昭和33年 12月15日に刊行しています。温泉浴と淡水浴とは違う作用があることや、湯治はどう行うかを、一般の人々にも分かりやすく書かれています。

 著書の一節【命の尊重−文化は病院から】の項では、厚生省(当時)が行う国民医療の貧しさを憂い「文化は命の尊重から」と一医学者の立場から説いおられることは、経済効率優先で地方医療行政を切り捨てている今を見ているかのようで、著書の刊行から半世紀の時間が過ぎています。

てしかが郷土研究会(松橋)